PROFILE
プロフィール
プロフィール
写真を撮り始めたのは、2017年。次男が生まれたころでした。
少しさかのぼりその2年前、我が家には生後2ヶ月の長男がいました。その「長男が教えてくれたこと」が、写真のもとになっています。
それは「日常はいつ終わるかわからない。いつもと同じ明日が来るのは当たり前じゃない。」ということ。
急性白血病だと分かった2日後、長男は天国へお引越ししました。
長男の急逝で私はそれまでの仕事を辞めました。
「なんとなくではなく、悔いなく生きるための何か」を探していた時、友達が紹介してくれたのが”結婚式のエンドロールを編集する人”を探しているカメラマンさんでした。
何かしていないと一日中長男のことを思って泣いて終わるだけの毎日になってしまう。未経験の世界でどうなるかわかりませんでしたが、やってみることに決めました。
「本当なら今頃、新しい仕事ではなく長男の育児をしているはず。」
自分でやると決めたことでしたが、辛くて泣きながら帰ることはしょっちゅうでした。
それでも、空っぽになった私を救ってくれたのは、新しい仕事とその時受け入れてくれてたチームのカメラマンさんたちでした。
結婚式の仕事が少しずつ板についてきた矢先、コロナ禍に突入しました。
人が集まれない。結婚式は挙げられない。
時間がたっぷりできた私は、すでに購入していたカメラで写真の勉強を始めました。
「プロが撮る写真とは、素敵なお花畑とかの背景で、かわいいお洋服を着た家族の写真よね」
そう思い込んでいた私は、素敵なロケ場所を探し次男を連れて練習をしました。
でも、何かがおかしい。楽しくない。
そんな時にSNSで見かけたのがプロが撮る「日常写真」でした。
写っているのは何気ない日常の一コマだけど、濁りがなく、クリアで、1枚だけ見てもその一日に何があったか伝わってきて涙してしまうようなそんな写真でした。
感情が揺さぶられて、未来に残しておきたいと思えるのは「日常写真」だったんだ。日常が突然終わったことのある私にはグサグサと刺さりました。
「気に入ってもらいたい写真」と「喜んでもらいたい写真」は似てるようで全然違う。
「気に入ってもらいたい写真」を撮ろうとしてたから楽しくなかったのか。
消極人間が勇気を出し、大好きな日常写真フォトグラファーさんにて連絡して「室内で美しく撮影するための技術レッスン」を受けました。室内は暗く、光が混ざっていることが多く、クリアな写真にするのは実はとても難しいのです。
「こんな自分が、カメラマンやります!と言ったとこで、依頼してくれる人なんかいるのかな?」
結婚式の仕事はチームでやっていましたが、フリーランスカメラマンとなると完全に1人。フリーランスの人はもっと華やかでコミュ力が高くて人脈もあるイメージ…
「人見知りでコミュ力低く友達も多くない話すのも下手な自分なんかが1人でできるわけがない。」今思えば卑屈にも程がありますが「誰かにどう思われるとか、そんな理由でやらずに後悔したくない」「長男のことを思えばどんなに辛いことがあっても大丈夫」そう言い聞かせてフリーランスカメラマンをやってみる、続けてみることにしました。
幸い写真の勉強をしたり、使ったことのないストロボを研究したりするのは楽しく「こんな使い方や撮り方があったのか。」「次はこう撮りたい。」「お客さんにリラックスしてもらうには?」などなど学びながら、経験しながら、ちょっとずーつ技術も向上し人見知りもマシになっていきました。うまくいかなくて落ち込む時は、当時次男がはまっていた「きかんしゃトーマス」の『だめだめあきらめちゃ』という歌を聴いて乗り切りました。今では一緒に勉強したり撮影トレーニングしてくれる大好きで大切なカメラマンのお友達もできました。
そして写真の仕事を続けていくとだんだん、「みゆきさんの優しい、あったかい雰囲気が好きです」と言ってもらえることが少しずつ増えてきました。そんな予想外の声に驚いていると、「見た時の美しさはもちろん、その人の内面まで写ってるような松本さんの写真が好きです」「写真見て初めて泣いた」「みゆきちゃんの写真が大好きだから、もっと色んな人に知って幸せな気持ちになってもらいたいんだよね♡」「撮ってもらった写真、宝物にします」こんな言葉までいただくようになりました。その度に「その言葉が私には宝物です!!!」ともれなく涙しました。
「もしかして、私は私のままでも受け入れてもらえるのかもしれない」そう思えるようになりました。
本当に、仕事を通じて出逢ってくださった方たちのおかげです。
つっ走る私をいつも「おう!行こうぜ!やろうぜ!」と文句も言わずいつも応援してくれる夫にも、「いつもしゃしんとってくれてありがとう」と手紙をくれる次男にも大感謝です。
日常写真でも、記念日やお祝いの日でも、どの撮影も撮り方と目指す写真は変わりません。
そこに写る人達の人生のストーリーがわかって、見る人を時には慰めたり励ましたりしてくれる写真です。
例えば育児に自信が持てない、子どもが一人暮らしを始める、結婚する、自分自身が年老いてきた。そんなちょっと切ない時に「それでいいんだよ。一生懸命やってきた。これでよかったんだよ。」と全肯定してくれる。もしもお子さんが社会に出て自分を否定しそうな出来事があった時は「大丈夫。あなたがいてくれただけでこんなに幸せだったんだよ。」と伝えてくれる。
それでも日常写真をよりおすすめするのは、そんな瞬間はささやかな日常にこそつまっている、と自分ちの日常を撮り続けてきて実感したからです。昔の私みたいに「写真を撮るのは記念日でなくては」とか「きれいな場所できれいな服でなくては」みたいな「こうでなくては」に縛られず、もっともっと自由に「忘れたくない、残しておきたい瞬間」を想いのままに選択してもらいたいからです。
最近では「引っ越すので今の家の風景を残しておきたいです。自分も子供の頃に引っ越したけど前の家の記憶はあまりなくて。子どもは小さいから覚えていないだろうけど、ここで暮らしたんだよって写真で残しておきたいです。」「小学校に上がる前に保育園の登園風景を残しておきたいです。」という想いのこもった具体的なご依頼をいただけるようになり本当に嬉しい限りです。
たとえ散らかった部屋でも、きれいなお洋服じゃなくても、むしろそれが数年後には懐かしさでいっぱいの光景に変わっているはず。誰かや何かと比べなくても、ご家族がいて、安心できる家がそこにあることが私には何よりも幸せに見えています。
「元気でいてくれて、ありがとう」
「おおきくなって、おめでとう」
撮りたい瞬間が見つかったら、教えてください。こんな想いと一緒に、撮りにいきます。
tsukihi photograph
松本 みゆき